二泊三日日本弾丸旅行記 第一章・準備
それは突然やってきた。そう、突然に全く仕事に行けなくなったのだ。職場からは、急遽一週間の休みを与えられた。一週間で回復せよとのことだった。
私は考える。一体どうすればこの状況は打開できるのだろうか? と。病院に行くには時間が短すぎる。病院は既に予約でいっぱいであった。しかし家で大人しくしていても良くなるようには思えない。なんとしてでも外出程度は出来なくてはならない。
そこで突如思いついたのは旅行に行くということだった。
乗りたい乗り物や見たい景色を見ることにしよう。そう思い立った私は早速、旅行の計画を建てることにした。時に三月八日のことである。出発日は…………翌三月九日。
まず行きたいところ。ちょうど季節は梅の頃。水戸の偕楽園は梅の名所として有名である。ここには寄りたい。
どうせ水戸の方に行くならば、常磐線は乗り通してみたい。
常磐線を乗り通すならば、仙台まで行けるではないか! 新幹線のグランクラス[1]には前から乗りたいと思っていたのだ。これは乗らない手はないだろう。
ついでだ、サンライズ[2]も乗りたい。確か新幹線から特急は割引が効くのではなかったか。
曖昧な知識で予定はどんどん組み立てられていく。
サンライズでひとまず岡山まで行くのは良い。しかしその先はどうしたものか? 広島の方までは一度行ったことがある。とりあえずはその辺まで行こう。どうせ広島まで行くなら船に乗って東に向かって帰るのが良いだろう。
広島から出ているフェリーはないか? なかった。九州門司から神戸へのフェリーしか。
よしそれならば、それに乗ってやろう。
こうして予定は膨れ上がる。
そして最後に、この行程の最終日、すなわち三月十一日は、小田急ロマンスカーVSEのラストランの日であった。これも乗る他ないだろう。しかしチケットは取れなかった。当日の予約キャンセルを待つしかない。
計画はこのようになった。
上野 08:45発
水戸 10:57着
14:32発(この間、昼食──納豆と鮟鱇を食べる──と偕楽園で梅を楽しむ)仙台 19:44着
19:54発(これがサンライズに間に合う最後の新幹線であった。水戸滞在時間もこれによって上限が決まることに)東京 21:23着
21:50発(サンライズにて一泊)岡山 06:34着
06:57発広島 09:57着
12:45発(昼ごはん──広島のお好み焼き──と原爆ドーム、可能なら厳島神社まで観光したい)門司港 17:21着
17:35発(フェリーのバスがこの時間に出る。にしても広島と九州は遠い。広島滞在時間の上限はここに合わせられている)新門司港 17:55着
18:40発(フェリーの乗り込みがかなり早いために九州の観光は断念。フェリーにて一泊)神戸港 07:10着
神戸港から六甲ライナーアイランド北口まで無料バス
六甲ライナーアイランド北口から六甲ライナーにてJR住吉まで
JR住吉 08:30発
名古屋 11:43着
12:16発(ここで昼食。きしめんを食べたい)小田原 17:08着
以下ロマンスカーに乗れなかった場合。
以下ロマンスカーに乗れた場合。
小田原 17:45発
新宿 19:05着
在来線の移動は全て青春18きっぷ。これによって旅費をかなり節約した。また、新幹線はグランクラス、サンライズはソロ、フェリーも相部屋となった。グランクラスは外せなかったのでそこに合わせて、サンライズとフェリーは安く済ませることに。
そして計画が完成して直ぐに、私は駅へ切符を購入しに行くのだった。
新幹線からサンライズへの乗継割引は適用されなかった。しかし必要な切符は全て手に入った。あとは翌日を待つだけである。(続く)
画像は新門司港ー神戸港間のフェリーのネット予約のもの。代金は当日、窓口にて支払う。
[1]グランクラスは北海道・東北・上越・北陸新幹線に使用されるE5・H5系とE7・W7系に用意されたグリーン車よりも格上の座席サービス。列車によっては軽食・飲み放題(アルコール含む)のサービスまでついてくる。今回乗るのは軽食・飲み放題サービス付きの列車。飛行機のファーストクラスをイメージすると分かりやすいかもしれない。
[2]サンライズは現在に日本で唯一定期運行している寝台列車、サンライズ瀬戸・出雲のことである。もはや日本にはこれ以外に定期運行されている寝台列車は絶滅してしまった。